<金口木舌>王者のドラマを


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 ギネスに認定される偉業なのに、世間の反応がこれほど鈍いのも珍しい。3兄弟がそろって世界王者になったボクシングの亀田家のことだ

▼過激な言動に好き嫌いはあるが、そればかりとは思えない。ヘビー級のモハメド・アリ、5階級制覇のシュガー・レイ・レナードなどビッグマウス(大口をたたく人)と言われた王者はこれまでもいた
▼兄弟王者という夢を実現した力量は素直にたたえたい。外野からのやじをはねのけたのも立派だ。ただ派手にKO宣言しながら防御重視の試合など物足りない面があるのも確か
▼世界中の現役ボクサーの戦績と独自のランキングをまとめた「BoxRec」というサイトがある。紹介文を見ると「テレビで人気を得た」(興毅選手)、「観客の前で歌うのが恒例」(大毅選手)とある。王者の横顔がこんな内容でいいのか
▼8月に今帰仁村で講演したロンドン五輪のレスリング金メダリスト・小原日登美さんは「結果より過程が大事と気付いたとき頑張ることができた」と強調していた。金メダルの偉業を称賛する以上に、そこへ至った道のりに聴衆は尊敬の念を抱いた
▼結果が全てのプロスポーツでも勝てば何でもありという訳ではなかろう。スポーツに限らず、どんなことでも目標に届く過程にドラマがある。まずは日本人王者との統一戦か。王者の名にふさわしいドラマが見たい。