<金口木舌>海浜美化に逆行?


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 1990年7月7日の県議会本会議。海浜を自由に利用できる条例を提案した議員は提案理由の説明でニライカナイ信仰に触れながら「私たち沖縄の歴史や文化の中で海が重要な要素を占めてきた」と述べた

▼全国初の画期的な条例案は可決され、事業者は海浜を囲い込めなくなった。同時に海浜にごみを残さないマナーの徹底が課題となる。条例は「海浜は掛け替えのない遺産」とうたい、利用者は適正な保全が責務となった
▼県民の意識も変わった。海辺の清掃活動は全県的に広まり、美化意識も高まった。「ごみは持ち帰りましょう」。大半のビーチが看板に掲げるこの言葉はもはや県民の常識だ
▼それに比べ、国の認識はふに落ちない。道路建設に使った仮桟橋の鉄製支柱を217本も引き抜かずに埋めていたことが発覚した。場所は波の上のビーチ沖の浅瀬。国は「ミスはない。あり得ること」と言う
▼だが専門家は「建設資材を海に捨てたことと同じ」と指摘する。早い話、不法投棄かとの疑いがある。沿岸に建つ波上宮はニライカナイ信仰の聖地とも言われ、もし誰かが浅瀬にごみを埋めようものならとがめられよう
▼工事資材とはいえ、最大40メートルの鉄柱だ。沖縄の歴史文化に思いをはせ、海を大切に思う気持ちがあったら違った展開になっただろう。“不都合な現実にふた”という文化は沖縄に似合わない。