<金口木舌> ミカン外し


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 教師を志すきっかけになったと言う人も多いテレビドラマ「3年B組金八先生」で印象的な場面がある。教師が問題を起こす生徒を「腐ったミカン」に例え、「一つでもあれば他のミカンも腐ってしまうから、放り出さねばならない」と主張する

 ▼その言い草に主人公の教師は反発したが、現実の教育の場でも“ミカン外し”があった。東京都足立区では2006年の全国学力テストで、特定の児童を採点対象から除いたことが問題になった
 ▼このテストでは試験中に校長と教師が児童の答案を指さして誤答に気付かせる不正を図ったことも発覚。背景には、学校への予算配分に学力テストの伸び率を反映するなどの“成果主義”があったとされる
 ▼静岡県の川勝平太知事が、学力テストの成績下位校の校長名を公表する意向を示して論議を呼んでいる。「子どもを伸ばすことができない教師には退場を願いたい」とも述べ、成果を要求している
 ▼授業の質の向上は学校の責務だ。しかし見せしめのような校長名公表は現場を萎縮させるだけでプラス効果はあるまい。学校の序列化が子どもたちに与える影響も気になる
 ▼同じ学力テストで沖縄は小中6教科で最下位だ。上昇の兆しがないのは歯がゆいが、だからこそ学校だけでなく社会全体で冷静な議論が必要だろう。子どもへの配慮を欠く言動こそ“教育的指導”ものだ。