<金口木舌> 7年先の姿


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 小学生のころ、ノストラダムスの予言がはやった。1999年7月に人類が滅亡するとの説は子どもの好奇心を捉えた。「35歳になったら死ぬのか」と友人と冗談めかし、四半世紀も先のことには現実感も危機感もなかった

 ▼7年先となるとどうだろう。2020年東京五輪が決まり、自分の年齢に7を足して、その時の姿に思いを巡らせた人も多かったのではないか。具体的にイメージしやすい時間軸だ
 ▼「7年」の響きに県民が大きな期待を寄せたことがある。96年、当時の橋本龍太郎首相の「普天間飛行場は5年から7年以内に全面返還します」との発言だ。夢が膨らんだものの現状はこのありさま
 ▼東京五輪の経済効果やら都心の再開発やらがにぎにぎしく語られる一方で、原発被害に苦しむ福島の7年後のビジョンは見えてこない。古里を離れて暮らす被災者にとっては来年の青写真さえ描けない厳しい現実がある
 ▼安倍晋三首相は「(汚染水の)状況はコントロールされている」と、国内では見せたこともないような力強く歯切れのいい言葉で言い切った。しかし国内外から「現実と懸け離れている」と疑問も噴出している
 ▼招致決定後の浮かれぶりを見ると先行き不安だが、7年後、福島の人たちが故郷の茶の間で安心して五輪中継を見られるよう、政府に課された宿題は大きい。責任と覚悟が伴う7年間だ。