<金口木舌>バレンティンの記録


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 プロ野球ヤクルト・スワローズのウラディミール・バレンティン外野手(29)が、プロ野球の最多本塁打記録56にあと1と迫っている。実現すれば、日本球界に燦然(さんぜん)と輝く大記録を打ち立てることになる

 ▼これまで55本塁打をマークしたのは1964年の王貞治氏(巨人)、2001年のタフィー・ローズ氏(近鉄)、02年のアレックス・カブレラ氏(西武)の3人。21世紀に入り、2人の外国人選手が「世界の王」に並んだものの、越えられなかった
 ▼浦添市の春季キャンプでもおなじみのバレンティン選手は、カリブ海に浮かぶオランダ領キュラソー島の生まれ。8歳のころから野球を始め、島では相手が好投手であるほど集中力を発揮したという。バレンティン選手の活躍で島は今、喜びに沸き立っているようだ
 ▼85年に阪神で54本塁打を放ったランディ・バース氏は、あと一歩のところで最多記録に届かなかった。ペナントレース最後の2試合で6四球と勝負をさせてもらえなかった
 ▼しかし、日本の投手も以前のように「打たれて不名誉な投手になるまい」と露骨に勝負を避けることはなくなった。本来当たり前であるべきだが、フェアプレーはすがすがしい。そして今、大記録の扉に手を掛けた
 ▼バレンティン選手の本塁打にどれだけのファンが興奮し感動したことか。大記録は日本球界の進化の証しでもある。