<金口木舌>アグーの里の誇り


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 国道58号の名護市役所前を過ぎると、左手に巨大な黒い物体が鎮座している。在来島豚アグーの像だ。赤く光る目など細部までリアルな造形は見るたびにほれぼれする

▼名護市は9月1日に「アグーの里」を宣言した。1980年代から保存に取り組み、絶滅寸前だったアグーを復活させた自負が込められる。失いかけた文化を取り戻したという誇りもある
▼在来島豚アグー保存会会長の島袋正敏さんに聞くと、純粋種もしくは純粋種に最も近い血を持つのは現在千頭弱という。十数頭から始めた復活への取り組みは、100倍近くまで成果を挙げたわけだ
▼しかし、まちを歩くと、店頭に「あぐー」と書かれたのぼりを多く見掛ける。千頭ほどのアグーがこんなに流通するのか不思議だが、平仮名の「あぐー」は西洋種と掛け合わせた交配種。純粋種の10倍以上いるという
▼気軽に食べられるようになったのはありがたいが、消費者には分かりにくい。沖縄が誇るブランド豚だけに純粋種がもっと広まってほしい。それだけに千頭という数字、まだ少なく思える
▼アグー復活の立役者でもある島袋さんは「宣言は終わりでなく始まり」と言う。アグーをさらに増やし、精肉だけでない商品開発も進められる。そこにはナゴンチュの知恵とプライドが詰まるだろう。アグーの一切れを口にする時、その思いも一緒にかみしめたい。