<金口木舌>スマホはスマートに


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 1990年代後半のこと。普及し始めたインターネットを新聞の見出しでどう表記するか、編集局内で議論があった。「ネット」だと「網」と混同するとして「Iネット」で決着し、しばらく使われた

 ▼それも今は昔。先日の報道には驚いた。母親がスマートフォン(スマホ)を持つ2歳児の22%が、ほぼ毎日スマホで遊ぶという調査結果だ。「外出先での待ち時間」が53%で、公共の場で騒がせないように活用する例が多いのにはまだ救われる
 ▼2004年に日本小児科医会が緊急提言をしたことがある。「2歳以下の子のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です」と。当時、親が話し掛けても視線を合わさず無表情な「サイレント・ベビー」が問題になっていた
 ▼その要因の一つに、親が忙しいからとテレビに子守をさせている実態があった。発達期の幼児は、人との関わりの中で心身を成長させる。テレビを消して対話を増やすことで劇的に改善した事例が、臨床の現場から幾つも報告されていた
 ▼幼児に限らない。若い世代も、友人同士でいるのに、会話せずスマホをいじっている光景をよく見掛ける。直接コミュニケーションが足りないとオジサン世代は歯がゆい
 ▼文明の利器が悪いのではない。要は使う側の問題だ。道具に使われるのではなく賢く使いこなす。現代人が携帯すべきは、そのスマートさなのかもしれない。