<金口木舌>トンネルの先の光


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 「あまちゃんロス(あまロス)症候群」-。NHK連続テレビ小説「あまちゃん」が終了し、落胆するファンの気持ちを表した用語だ

▼話題になったドラマの過熱ぶりを感じさせる。ロケ地の岩手県久慈市では「最終回をみんなで見る会」も開かれたほど。「あまロス症候群」の1人として気持ちはよく分かる
▼ドラマ後半は、東日本大震災後の復興にかける人々を描き、被災地を元気付けた。最終回で北三陸鉄道が運行を一部再開。主人公のアキと親友のユイが、トンネルへ向かって勢いよく走る姿が印象的だった。「今はここまでだけど」「来年はここから先も行けるんだ」。未来を見据えたせりふに、じんときた
▼「出口のねえトンネルはねえ」。岩手県釜石市に住む75歳男性の言葉と重なった。九死に一生を得た体験が『未来へ伝える私の3・11』(IBC岩手放送編、竹書房)に収められている。ボランティアガイドの男性は「現状をよく見て帰ってほしい」と訴える
▼ドラマは、前を向いて復興の道を歩む人たちを「忘れないで」と伝えているようだ。そんな中、霞が関では消費税増税に伴い復興特別法人税の前倒し廃止が検討されている。何とも薄情な話だ。「これとそれとは別」。これが国民感情ではないか
▼ドラマは終わっても、心は被災地とともにありたい。トンネルの先の光を目指して。