<金口木舌>その花、持ち去らないで


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 白いかれんな花が根元近くからぽっきり折られていた。本島北部のある林道でのこと。山歩きが趣味の友人に誘われ、絶滅危惧種のランを見に行ったときのことだ

▼せっかく見つけたランの姿にがっかりしたが、これも花を守る一つの方法と聞いて驚いた。乱獲者に根こそぎ持ち去られるよりも、根を残しておけば来年は株が増えるというのがその理由
▼ただ森に詳しい人の間でも意見が分かれるそうだ。案内してもらった友人が別の人に尋ねると、折らずに周囲の草で覆う方法もあると教えてくれたという。花を折らなければ種となって株が増えるという理由からだ
▼折る、覆うと方法は違っても目的は同じといえる。林道沿いの目立つ場所に咲く希少種は「人の目から隠せ」ということだ。白い花の名はダイサギソウ。県のレッドデータブックで、個体数減少の理由は「園芸用の採集」などとある
▼ダイサギソウに限らず、絶滅危惧植物が減っていく理由で多いのは、人の採集と自生地の開発。繰り返し読むと自然保護団体が発する警句を思い出す。「守るのも人間なら天敵も人間」
▼森に咲く花は、その環境に調和するから美しい。守るためとはいえ、大事な花を折ったり、草で覆ったりすることは心苦しい。採集する人も花を愛する気持ちは同じと思う。だからこそお願いしたい。その花、森から持ち去らないで。