<金口木舌>本の虫たちのパーリー


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 暑さが厳しかった沖縄もこのところめっきり過ごしやすくなった。芸術、グルメを楽しみ、読書ざんまいの「本の虫」がうごめく。浮き浮きする季節だ

 ▼2010年に亡くなったノンフィクションライターの黒岩比佐子さんも無類の「本の虫」だった。並はずれた資料収集力と緻密な取材で、魅力的な作品を残した。古書好きとしても知られ、珍しい古書の数々をブログで紹介した
 ▼資料の山との格闘が、黒岩さんが古書にのめり込むきっかけとなった。装丁の美しさに引かれて購入した本も多い。古書展からの家路は10数冊の本を抱え込むことが多く、肩こりに悩まされた。本人が嘆く通り「まさに“古本病”」だった
 ▼沖縄の「本の虫」たちによる「ブックパーリーNAHA2013」が始まった。出版社や新刊書店、古書店の関係者が30近くのイベントを開催し、本と街を盛り上げようと意気込む。東京、福岡など先行事例はあるが、「県産本」の元気がいい沖縄だけに注目度が高い
 ▼仕掛け人で編集者の新城和博さんは「本という『物』があるからこそコミュニケーションのきっかけになり、イベントが成立する」と語る。本を媒介に人と人、人と街をつなげる新たな試み。本好きの一人としてはたまらない
 ▼願わくば、地元客がゆったりと本を読めるカフェが那覇の街に増えてほしい。本を抱え、さあ街に出よう。