<金口木舌>子育て政策は親目線で


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 取材すればするほど疑問が湧いた。6年前、市町村が認可保育園への入所可否を判断する選考基準を調べた時のことだ。「なぜうちの子は入れないの」という親の素朴な疑問がきっかけだった

 ▼自治体には「本当に記事にするのか」と嫌がる担当者もいた。認可園のある県内22市町村のうち9市町村は基準を非公表とし大半が公表に消極的。「積極的に教える」は3市町だった。不透明な選考は問題だと感じた
 ▼共働きであっても両親がともに正規労働者でなければ入所しにくい。また待機児童になるのは親が求職中の場合も多い。これらが待機児童の温床だ
 ▼政府の「子ども・子育て会議」は今月、認可園の利用要件を求職活動や就学などを新たに認め、就労要件もパートや住宅勤務、夜間勤務まで拡大した。それを望んだ親がどれほどいたか、遅きに失した感がある
 ▼労働時間確保という経営者目線の保育行政から、育児環境を第一に考えた親目線への転換となるか注視したい。沖縄は共働きが多いが既にそれは全国的な流れ。求職活動を妨げ、就労形態で区別する要件は所得格差だけでなく“育児格差”をも助長する
 ▼要件緩和が機能するには政府の受け入れ支援と、市町村の取り組みが欠かせない。分かりやすい選考過程はその第一歩。利用者が「納得」してこその保育政策だということもお忘れなく。