<金口木舌>泡盛の新酒で乾杯


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 コンビニエンスストアで「ボジョレ・ヌーボー予約中」の張り紙を見た。時の速さを実感する。海を渡ってくるワインの解禁日は秋の風物詩の一つとなった。今年は11月21日

 ▼フランス・ボジョレ地区の新酒という名のワインが大きなブームになったのは1990年代初めのこと。当時、那覇空港に運ばれてきたボジョレ・ヌーボーを味わう会合を取材した。バブル景気の産物だった
 ▼泡盛派の当方は古酒の味にひかれるが、懐具合に応じて新酒を愛飲する。寝かせる積もりで買った三合瓶はいつの間にか空になる。「古酒づくりは高級な趣味」という居酒屋店主の優しい忠告が耳に痛い
 ▼読谷村商工会が10年前に泡盛を納めたタイムカプセルの開扉式が19日、残波岬であった。村が生んだ商売の神様・泰期をたたえ、地域の発展と泡盛の熟成を重ね合わせる読谷経済人の粋な取り組みは今回で2度目
 ▼10年の間に喜び、悲しみがある。前回の開扉式を待たずに他界した人もいる。息子と飲むために泡盛を納めていたという。商工会から届いたボトルに涙した息子は、古酒を通じて父と語り合ったであろう
 ▼実はカプセルから取り出したボトルが手元にある。10年前に同僚が納めていた。こっそり味見をしたいが、ここは辛抱。自慢にはならぬわが10年を省みつつ、読谷アチネーの繁栄を願い、ウチナー・ヌーボーで乾杯しよう。