<金口木舌> いま、子どもの居場所は?


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 心地よく夢中になれるおとぎ話がある。ディズニー映画にもなった児童小説「不思議の国のアリス」は物語に引き込む仕掛けが多彩だ。しゃべる猫や背が縮む薬、手足のあるトランプ…。アリスと一緒に不思議な国に迷い込んだ気になれる

 ▼インターネットの世界には「不思議の国」に負けないくらい、好奇心を駆り立てる画像や言葉、仕掛けがあふれている。多感な子どもたちには一層魅力的に映るだろう。スマートフォンや携帯の画面にくぎ付けになるのもうなずける
 ▼だが実害を被るとなれば、おとぎ話と結末が違う。県教育庁の県立高校調査で、携帯などを利用し被害に遭ったことがある生徒は775人に上った
 ▼被害内容は金銭、暴力、ストーカー、性的の順。有害サイトの閲覧を制限する機能について「知らない」「必要ない」がそれぞれ3割を超えた。危険に無防備な実態が浮かぶ
 ▼県警も先月、サイバー補導を始めた。出会い系サイトによる被害は全国では減少傾
向だが、県内では依然多い。少年非行が多い理由と同様、家庭や地域に居場所がなく、誰かを求めてしまうさみしさが誘因ではないか
 ▼物語の中のアリスは夢から覚めた。だがネットの世界は夢の国ではなく、今や現実社会の一部だ。肝要なのは、フィルタリング機能の利用と同時に、闇に潜む悪の世界に引っ張られない知恵の育成と居場所づくりだ。