<金口木舌>小泉流で世論を読めば


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 首相経験者には政界に影響力を残したい人と、隠とん生活に入るタイプがいる。最近の前者の代表は森喜朗氏か。安倍晋三首相の特使としてロシアを訪問するなど動きは活発だ

▼逆に退任後7年、表舞台に出なかった小泉純一郎氏は隠とん者と思いきや、そうではなかった。12日の講演で「首相が決断すれば『原発ゼロ』ができる。首相の判断力、洞察力の問題だ」と安倍首相に迫った
▼短く分かりやすい言葉を操る小泉節も健在。「政治の責任で使用済み核燃料の処分場にめどをつけろ」という一部報道に対し、「原発事故前から見つけられなかったのに、事故後に政治の力で見つけろと言う方が楽観的で無責任」とぶち上げた
▼もう一つの小泉流発言は「世論は軽視できない。大きな底流となっている根強い世論をどう読むかも政治家として大事だ」。かつて「自民党をぶっ壊す」発言で世論を味方につけた人ならではの見立て
▼小泉氏は沖縄の過重な基地にも触れ「負担軽減と言っても本土でも陸地に基地を新たに造るのは非常に困難」と述べ、メガフロート(人工浮島)を提言した
▼米軍基地の本土移転は無理、でも沖縄の負担は無視できない。世論のモヤモヤを読んだ小泉流ポピュリズムか。しかし本土だけでなく沖縄でも新基地建設は困難だ。本気で脱原発を言うのなら、“脱辺野古”にも舵を切れそうなものだが。