<金口木舌>「食べる力」の回復を


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 病気や加齢で食べることが困難になっても味わう楽しみを-。県内で摂食・嚥下(えんげ)に障がいがある人に向けた取り組みが始まっている

 ▼NPO法人・バリアフリーネットワーク会議が取り組む「うちなー介護食基礎講座」。ミキサーやとろみ剤を使い、喉ごしの良い沖縄料理を提案する。「スーチカーのやわらか汁物」「にんじんシリシリ入りジューシー」。幾つになっても障がいがあっても食べ慣れた沖縄料理を堪能できる。利用者の喜ぶ姿が目に浮かぶようだ
 ▼今年6月、神奈川県で患者の“食べる力”の回復を支援しようと看護師、医師らがNPO法人「口から食べる幸せを守る会」を立ち上げた。会発足後の大会には全国から約450人が集まり、関心の高さをうかがわせた
 ▼理事長で看護師の小山珠美さん(東名厚木病院摂食嚥下療法部長)は「食べることの意義、必要性を社会に訴えるだけでなく窮状を訴えたい」と語る。同病院は、集中治療室にいる脳卒中の患者に対しても食事のリハビリを促す。早期介入には正直驚く
 ▼急性期病院から転院後のリハビリの継続が課題とよく言われる。受け入れ先の病院や施設に十分なノウハウがなければ、せっかくのリハビリも無駄になる
 ▼団塊世代の“大介護時代”が始まる。摂食・嚥下リハビリの意義を社会全体でどう共有するか。長寿県沖縄にとっても大きな課題だ。