<金口木舌>公約も偽装か


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 これは正しい日本語か。新聞業界で自戒も込めて話題になった言葉がある。政治家や官庁の記事に見受けられる「後ろ倒し」だ。「前倒し」の反対語で、「予定の時期を先に延ばすこと、先送り」の意味で使われる

▼そもそも「前倒し」も歴史は浅い。「『繰り上げ』でも済むのに、1973年頃に官庁俗語として現れたのが広まった語」(岩波国語辞典)という
▼「先延ばし」や「先送り」より、「後ろ倒し」のほうが能動的なイメージがあると考えているからか。使う政治家や官僚側にごまかしの意図があるといったら言い過ぎか
▼今年も新語・流行語大賞に50語がノミネートされた。「賞味期限」はそう長くないだろうが、2013年の日本の空気をつかめる。話題のドラマやCMに登場した言葉には納得だが、「さとり世代」や「ダークツーリズム」は正直知らなかった
▼50のうちにはないが、今年を表す語に「偽装表示」がある。安い食材を伊勢エビやアグー豚と言い換えた。今や消費者離れという厳しい局面に立たされている。あるホテルチェーンは1億円を超える返金も予想されている
▼米軍普天間飛行場の「県外移設」を公約し当選した自民党の県関係国会議員が党本部から公約撤回を迫られている。「公約偽装ではなく、誤表示です」は最悪のパターン。圧力への「倍返し」を期待したいが、さてどうなる。