<金口木舌>悪法にレッドカードを


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 参議院の役割を問う時に、しばしば引用される演説がある。敗戦翌年の1946年、新憲法により貴族院は参議院となる。秋田三一議員は、貴族院に多くの開戦反対者がいながら大戦を阻止でなかったことを悔いた

 ▼そして二院制の必要性をこう主張した。「わが国民性の感情的で、付和雷同の傾きが大きく、軍国主義が宣伝されれば直ちに軍国主義となり(中略)将来といえども過激なる急進主義が少し勢いを得れば、その主義国家と化する恐れのあるわが国におきましては、常に冷静に行き過ぎを抑える第二院は他国に増して必要」
 ▼戦後、GHQが出した憲法草案は一院制だったが、日本側に譲歩した。そこには一院制の下で多数を握った与党が暴走するとブレーキが利かなくなるとの懸念があった
 ▼特定秘密保護法案が参院に送られた。安倍晋三首相は衆院で「40時間も審議した、熟議だ」と言い放った。首相お得意の強弁だが、国民が「戦前の治安維持法の再来か」などと懸念する中、説明が粗雑すぎる
 ▼福島県の地方公聴会で陳述者全員が反対か慎重審議を求めた。原発情報の隠ぺいに対する不信をじかに聞いた翌日に自民、公明両党とみんなの党は強行可決した。被災者の目を見て申し開きができるのか
 ▼参議院はこれを反面教師としてほしい。悪法にしっかりレッドカードを突きつけてこそ「良識の府」の株も上がる。