<金口木舌>広がれ無料塾


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 「勉強ができないから高校に行かない」-。経済的理由で塾に通えなかった子どもたちが学ぶ喜びに目覚め、明るい笑顔を取り戻している

▼県内の市町村で、生活保護世帯の子どもたちを対象にした無料の学習塾が増えている。高校進学を促すことで将来の選択肢が広がり、貧困の連鎖が断ち切れる。画期的な取り組みだ。塾に通った女子生徒は「英語の先生になりたい」と夢を語った
▼子どもたちにとって「学ぶ喜び」を獲得するのはもちろんだが、放課後の居場所づくりという効果も大きい。近所付き合いが乏しくなった現代社会で、親や教師以外の大人たちとの出会いは子どもたちにとっても貴重だ
▼うっかり足を滑らせたら、どん底の生活に転げ落ちてしまう。貧困問題に詳しい湯浅誠さんは、日本が「すべり台社会」になってはいないか、と警鐘を鳴らす。全国の生活保護世帯は過去最多を更新し続ける。親の“経済格差”が子どもたちの進路を左右している
▼「アベノミクス」は富裕層が先に潤えば社会全体が潤うというが、そううまくいくか。同時に進めようとしている消費税増税は、低所得者により負担がかかる。ちぐはぐな感じがしてならない
▼「すべり台社会」からの出口の一つが、学びとの出会いではないか。地域が子どもたちに手を差し伸べる。そんな無料塾が県内全市町村に広がってほしい。