<金口木舌> 大詰めの特定秘密保護法案


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 旧ソ連時代、ある男が赤の広場で叫んだ。「最高指導者のばかやろう」。駆け付けた秘密警察に逮捕された男が「罪状は侮辱罪か」と聞くと警官は答えた。「いや国家機密漏えい罪だ」。政権批判を厳しく弾圧した旧ソ連で、こっそり語られた小話(アネクドート)だ

 ▼特定秘密保護法案が大詰めを迎えている。閣僚ら「行政機関の長」が「秘密」というワッペンを貼れば、その情報は半永久的に「国家機密」となる。漏らせば懲役最大10年だ
 ▼役所や政治家にとって不都合な情報は秘密とされかねない。懸念が高まる中、今度は石破茂自民党幹事長が自身のブログで、官邸前で政権に抗議の声を上げるデモまで「テロ行為」とみなし批判した
 ▼市民が政策に異議申し立てをするデモと、暴力や破壊行動を行うテロ活動とを同一視するかのような発言は、この法案の危うさを示す
 ▼同法案には防衛や外交の分野だけでなく、「特定有害活動」「テロ活動」も加わる。石破氏の発言からすると、市民が主義主張を訴えるデモにも、政権が「テロ活動」というワッペンを貼ることができるのだ
 ▼官邸前では毎日のように、反原発や特定秘密保護法案に反対を訴える人たちがシュプレヒコールを上げる。いずれ、官邸前で叫べば逮捕される世の中になるのか。情報から目隠しをされ、政権への不満を小話でしか語れない。そんな社会は見たくない。