<金口木舌> ルムンバの誇り


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「われわれが欲したただひとつのものは-公正な生活、虚偽のない尊厳、制約のない独立にたいする権利であった」。半世紀前の手紙を読んで、沖縄とイメージが重なった

 ▼手紙を書いたのはアフリカ・コンゴの独立時(1960年)に初代首相を務めたパトリス・ルムンバ。「世界史を変えた100通の手紙」(日本実業出版社)に紹介されている
 ▼コンゴは地下資源が豊富で、ベルギーをはじめとする欧米資本の支配下にあった。ルムンバは民主的な選挙を通して首相の座に就いた。ところが欧米資本が支援する分離派や軍のクーデターに遭い、新政府は10日で崩壊、半年後に殺害された
 ▼手紙は獄中から家族に送ったものという。手紙の中には植民者を批判する一節もある。「かれらは一部の同国人を分裂させ、買収し、ありとあらゆる手段で真実をねじまげ」た
 ▼果たしてコンゴだけの話だろうか。沖縄だけに基地を押し付けるため、公約撤回を迫り、県民を「分裂させ」、「真実をねじまげ」る、植民者は現在もいる
 ▼政治と経済の自立を求めたルムンバの死は、旧宗主国に逆らうことをためらわせ、アフリカの転換点になったといわれる。沖縄にも「新基地受け入れ」という歴史の転換点は近づいているのだろうか。圧力は強くとも公正と尊厳を求めたルムンバのように、県民の誇り高き要求は取り下げられない。