<金口木舌>後進へ贈るもの


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 プロ野球のオフ・シーズン、各球団では契約更改交渉や移籍交渉が行われ、来シーズンのチームづくりが着々と進む。そんな中、グラウンドに別れを告げ、ユニホームを脱いだ選手もいる

 ▼広島の前田智徳さん(42)もその1人。広島一筋に24年間プレー、通算2千安打を達成した。「孤高の天才打者」と評され、現役生活終盤には代打の切り札として存在感を示した
 ▼前田さんがたたえられるのは成績だけではない。度重なる故障を乗り越え、挑み続けた不屈の闘志だ。アキレスけん断裂の大けがを負っても「結果が全て」と高いプロ意識を持ち続けた。その姿は若い選手のかがみとなっただろう
 ▼同じ広島で、かつて先発にリリーフにと活躍した大野豊さん(58)は今年初め、野球殿堂入りを果たした。島根県出雲市の信用組合の営業マン兼軟式野球部員からプロ入り。初登板は1死を取っただけで5失点と散々の結果だった。その後、球界を代表する左腕に成長した
 ▼初登板後、母親からもらった「一度の失敗で諦めるな」の電話が、大野さんの野球人生の原点だという。試練を向上心の糧としたのだ。そして、自分を支えてくれた周囲への感謝も忘れなかった
 ▼今オフ、県出身で現役を退いた選手もいる。名選手に限らず、ユニホームを脱いだ選手たちは後進に多くの教えを残してくれた。「お疲れさま」と言いたい。