<金口木舌>「不幸な時代」にならないために


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「戦争は突然起こるんじゃないのよ」-。元新聞記者のむのたけじさん(98)の言葉だ。戦時中、新聞記者として中国、インドネシアで従軍し、敗戦の日に新聞社を辞めた

 ▼戦後、むのさんは一貫して反戦を訴えた。戦争に突き進んだ時の軍靴の音が耳に残る。「ちゃーんと計画する人たちがいる。少なくとも現代の戦争は、何年も前から計画して金から人から徹底的に動員するんだ」(信濃毎日新聞『たいまつを灯す』)
 ▼戦後60年企画『沖縄戦新聞』で憲法学の高良鉄美琉球大教授に連載「戦から見える憲法」で戦前を読み解いてもらった。有事法制整備の「終局」としての戦争に警鐘を鳴らしていた
 ▼戦前、国は治安維持法や国家総動員法などを次々と成立させ、戦争に備えた。新聞は無謀な戦争に走る国家にブレーキを掛けるどころか、国民を戦に駆り立てる側に回った。戦後それを深く反省し、国民に不戦を誓った
 ▼8日は日米開戦のきっかけとなる真珠湾攻撃から72年の節目。日本軍の戦闘機が向かった先には無辜(むこ)の市民が住んでいた。不安な思いで機影を仰ぎ見た県系、日系の移民がいただろう
 ▼憎しみをぶつけ合う不幸な時代を再び招き寄せるのか。巨大与党が特定秘密保護法を強行成立させた。何がしたいのか。主権者である国民、権力を監視するジャーナリズムの踏ん張り時。平和の火を消してはならぬ。