<金口木舌>暮らしの豊かさ実感いつ?


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 米ワシントン中心部での「反格差」デモ。参加者の一人が記者にこう言った。「今の世の中じゃ、1%の金持ちをマジョリティー(多数派)と呼ぶんだ」

 ▼1960年代、アフリカ系市民が多数派の白人を相手に劣勢を克服し公民権を獲得した。その運動と最近のデモを比べた記事にあった言葉だ。昨今は99%の庶民層が1%の富裕層を相手に街に繰り出す
 ▼よそ事ではない。厚生労働省が最近発表した調査で2011年は世帯ごとの所得格差が過去最大を更新した。最近の毎月勤労統計調査でも基本給などの所定内給与は16カ月連続で減少が続く。賃金水準が低いパートなどの非正規労働者の増加が要因という
 ▼アベノミクス効果はどこへやら。そんな気持ちにもなる。企業業績の回復は見られても庶民の安定雇用や基本給への波及は依然鈍い。安倍政権は来春闘に向けて基本給アップを労使に働き掛け、異例のてこ入れを図る
 ▼家計改善への期待の半面、不安も脳裏をよぎる。その来春に確実上がるであろう消費税のことだ。99%の庶民が景気回復や暮らしの豊かさを実感できるのはいつか。国民は1%が潤うだけの政策は望んでいない
 ▼安定した仕事や給料を得られ、庶民が明るい将来を描ける社会を見通せるまでアベノミクスの真価は計れない。願わくば、懐具合を気にする師走は今年で最後にしたい。