<金口木舌>怒りの紙つぶて


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 特定秘密保護法の成立から一夜明けた7日、安倍晋三首相は都内で坐禅を組んだ。全国紙によると、坐禅を共にした自民議員に「朝、目が覚めたら、国会のあたりが静かだったので、嵐が過ぎ去った感じがした」と語ったという

▼国会に押し寄せた秘密保護法反対の訴えも、首相には一陣の嵐だったわけだ。国民の声に背を向ける点で、デモをテロ行為に例えた石破茂自民党幹事長と同根の浅はかさを感じる
▼安倍首相の祖父・岸信介元首相の逸話が頭をよぎる。1960年5月、安保闘争の激化に対し「首相官邸付近は騒がしいが、球場は満員だし、映画館や銀座などはふだんと人出は変わらない」と居直った。約2カ月後、岸内閣は退陣する
▼当時6歳だった安倍首相は、安保反対のデモの声を「どこか祭りの囃子(はやし)のように聞こえたものだ」と自著で回想している。幼少時の思い出話にも祖父の遺伝子を見る思いがする
▼岸元首相は「声なき声に耳を傾ける」とも述べ、物言わぬ国民の多くは自分を支持していると都合よく解釈した。53年を経て、民主国家の屋台骨が激しくきしむ音を安倍首相は聞いているだろうか
▼米軍基地を抱えるが故、秘密保護法の悪影響を受ける沖縄は政府の暴走を許すわけにはいかぬ。国民の声に耳を貸さぬ為政者に怒りの紙つぶてを投げ続けよう。もちろんこれはテロではない。