<金口木舌>南アフリカと日本


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 「生まれた所や皮膚や目の色で/いったいこの僕の/何がわかるというのだろう」。南アフリカで差別と闘ったネルソン・マンデラ氏の訃報を聞き、思い出したのが、この歌詞だった。ザ・ブルーハーツの「青空」

▼「正義を求める巨人」「人類の宝」とたたえられたマンデラ氏の人生に学ぶべきことは多い。対立でなく全ての人種の融和を追求する思想は、誰もが理想とすることだ
▼ただ忘れてはいけないことがある。マンデラ氏がまだ獄中にあった1988年、国連反アパルトヘイト委員会が出した声明のことだ。「日本は人種差別に加担する遺憾な国である」。名指しで痛烈に批判された
▼差別撤廃へ各国が経済制裁を強める中、当時の日本は南アフリカの最大の貿易相手国だった。経済で優位に立ったことで、現地の日本人は、黒人には与えられない権利が保証される「名誉白人」として特別扱いされた
▼日本の投資や貿易は、南アフリカで差別する側の体制を強固にした。意識するしないにかかわらず、何も声を上げなかった私たちは、マンデラ氏への不当な抑圧に間接的にでも力を貸していたのではないか
▼沖縄の基地問題にも通じるが、差別の根底にあるのは無意識、無関心だ。遠い国のことだから、遠い離島のことだから、では済まされない。巨人との別れにあたり、あらためて歴史に学ぶ大切さをかみしめたい。