<金口木舌>未来の農家像


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 名護市内にはおいしいパン屋が多い。そのうちの一軒に寄ると、つい手を出してしまうものがある。生産者の名前が商品名になっている野菜サンドイッチ。食べる度に野菜のおいしさを見直す

 ▼やんばる野菜の魅力は至る所で感じられる。沖縄科学技術大学院大学内のカフェ「カイト+」もその一つ。食糧自給率向上を目指す運動「フードアクションニッポン」で今年の消費促進部門優秀賞を得た
 ▼「カイト+」では、仕入れた野菜の販売もしている。外国や県外出身の教授陣は見慣れない野菜に戸惑うこともあるが、売るときに調理法も一緒に教えるので好評という
 ▼沖縄野菜を味わうだけでなく、調理することでその魅力はさらに増す。世界最先端の研究者が、野菜を通して沖縄文化を知る入り口にもなっている
 ▼カフェを運営する農業生産法人「クックソニア」に聞くと、東南アジア出身の研究者から要望があり、生産していなかった香草類の栽培にも取り組み始めたという。買う側、売る側の相乗効果で生産意欲も高まっている
 ▼以前、高校生の集まりで農業といえば、重労働、もうからないというイメージがあると言うのを聞いて残念に思った。だがこのカフェを訪れれば考えが変わるだろう。食で沖縄の文化を発信する誇りにあふれている。作る、売る、食べるに加え、発信する。未来の農家像がここにはある。