<金口木舌>浅田真央さんとラフマニノフ


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 今年はロシアの作曲家でピアニストのセルゲイ・ラフマニノフの生誕140周年、没後70周年の記念すべき年だ

 ▼節目を祝うコンサートが国内外で開かれるなど、いつの時代も愛される作曲家の1人だ。叙情的な音楽を聴いていると、ロシアの荒涼とした冬の風景、人々のたくましさを連想させる
 ▼今年、フィギュア・スケートの浅田真央さんは、フリーのプログラム曲にラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」を選んだ。来年のソチ五輪を意識した選曲だ。前回の五輪でもラフマニノフの「鐘」で滑ったが、重厚な音楽に報道陣からも「暗過ぎるのでは?」との声が漏れたほどだ
 ▼ソチ五輪で再びラフマニノフで滑ると聞いた時は、驚いた。しかし、浅田さんは「(銀メダルだった)バンクーバーの悔しさを同じ五輪で、ラフマニノフで晴らせるんじゃないか」と金メダル獲得の強い決意を口にした
 ▼五輪後、ジャンプを一から見直した。今期の滑りは持ち前の美しさに加え、精神力の強さを感じさせる。「協奏曲第2番」は、ラフマニノフにとっても復活の曲だ。一時期、作曲の自信を失ったが、この曲の完成で再び自信を取り戻した。浅田さんがたどった道のりと重なる
 ▼全日本フィギュア選手権が開催中だ。華やかな氷上の裏には、選手たちのストイック過ぎるほどの努力と人間ドラマがある。熱い闘いに注目したい。