<金口木舌>奄美のクリスマスメッセージ


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 目抜き通りや行楽地で色とりどりの電飾が点滅する。年が押し詰まり、クリスマスがやってきた。1週間後には年が明ける。例年なら忙しさの中にも華やかな気分を楽しむところだが、今年は違う

▼普天間飛行場返還・移設問題は正念場を迎えた。辺野古埋め立て申請に対する知事判断が目前に迫り、張りつめた空気が漂う。基地に対峙してきた県民の歩みは歴史の転換点にある
▼60年前のきょう、奄美の島々は8年間の米軍統治に終止符を打つ歴史的な日であった。「クリスマスプレゼント」に例えられた奄美返還は、島ぐるみの復帰運動の成果だった
▼地元紙・南海日日新聞社の創設者、村山家國氏は1971年の著書「奄美復帰史」で、復帰運動は「平和闘争」であり、「基本権を侵害された人間の、より根源的な抵抗」と記す。圧力と分断に抗(あらが)う現在の沖縄の闘いに重なる
▼奄美復帰後も基本権侵害は続いた。米軍統治下の沖縄で、奄美出身者は「外国人」「非琉球人」として扱われ、公職追放や参政権剥奪の差別待遇を受けた。その苦悩を忘れまい
▼「奄美復帰史」で村山氏は沖縄返還に触れ「基地問題は新たな波乱を呼ぶ形勢にある」と指摘した。波乱は今日まで続き、激震を前にしている。「平和闘争」「根源的な抵抗」の文字を奄美のクリスマスメッセージとして受け止め、歴史の転換点を踏み越えよう。