<金口木舌>上手なうそ、下手なうそ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「頭山」という落語がある。けちな男がサクランボを種ごと食べたら、頭から芽が出て桜の大木が生え、ご近所さんが頭上で花見を始める-という筋だ

▼この話を例に、今は亡きコラムニスト天野祐吉さんが“誠実なうそ”を勧めていた。「嘘(うそ)は、早いうちにバラしてしまうのが正しい嘘つきのコツだ」(『ことばの原っぱ』)。うその下手な政治家には自分がうそをついていると思わない人がいて怖い、とも
▼その典型が「(福島第1原発の)状況はコントロールされている」だろう。安倍晋三首相が五輪招致演説で豪語した。その後も汚染水は漏れ続け、大方の国民、特に福島県民はすぐ見抜けたが、海外では真に受けた人もいるかもしれない
▼秘密法成立後の「一般人が罪に問われることはない」との首相発言も下手なうその部類だろう。公約をひっくり返した沖縄の自民党国会議員、県連の「苦渋の決断」はどちらか▼クリスマスに首相が仲井真弘多知事に大見えを切った「オスプレイ訓練の半分移転」「環境保全協定」「牧港補給基地の返還前倒し」は果たして…
▼「頭山」はこう続く。頭上がうるさくなった男は木を引っこ抜き、頭にできた池に飛び込み死ぬ。わが身に新たにできたものを初めはありがたがっていたが、気づけば命取りの存在だった。きょう発表される知事判断が、沖縄の自殺行為となってはいけない。