<金口木舌>子孫に誇れる選択を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「普天間が全面返還って本当?」。1996年4月12日の朝は1本の電話で始まった。全国紙のスクープを知った宜野湾市役所職員からだった。宜野湾市担当として深夜まで取材に追われた

▼あれから17年たち、27日には知事が辺野古の埋め立てを承認した。17年前のスタート地点から県内移設への反発が強かったことを思うと、またしても移設問題で名護市民が選択を迫られる構図になったことが残念だ
▼知事が決断に至った道のり以上に、名護市民は苦難の時間を過ごしてきた。96年以降、4度の市長選挙で市民は二分された。来年1月19日の市長選で、あらためて民意が問われる
▼ただ出馬を予定する2氏とも、移設問題に対するスタンスは違えど「ここで決着をつける」という思いは共通する。それは市民の願いでもある。政府の無策のつけをいつまでも一地方に押し付けるな、という思いだ
▼「政治とは統治者と民衆の間に結ばれる単純な契約だ」と喝破したのは、フランスの思想家ジャン・ジャック・ルソー。移設反対か推進か、それぞれが掲げる公約が実現可能な契約なのか、判断基準も極めて単純といえる
▼名護市民はまたしても重い判断を迫られるが、今度こそ地元の意思を尊重してほしい。市民との約束を守るのは誰か、その選択は子孫に胸を張れるものか。投票まで3週間、考える時間はたっぷりある。

→動画 仲井真知事 辺野古埋め立て承認記者会見