<金口木舌>ご当地映画と呼ばないで


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 いわゆる「ご当地映画」とはひと味違う。名所や旧跡、名物料理などが、物語の筋と関係なく紹介される観光案内ビデオ風なものとは異なる

▼名護市のシンボル「ひんぷんガジュマル」周辺を舞台にした映画のことだ。今月下旬から撮影が始まる。製作が発表されてから、関係者に会うたびに「主演女優、もう決まった?」と聞くのがあいさつ代わりになった
▼正直言って、まだ市民の盛り上がりはいまひとつ。ただ参加を呼び掛ける映像の製作や大学生が関連情報を発信する瓦版発行、地元出演者の募集、特産品の開発など、本番に向けた活動は地味ながらも着実に進む
▼映画製作が目指すゴールは、名護市の活性化だ。出来上がりへのこだわりはさることながら、製作過程への市民の参加を通して、まちの元気を取り戻したいという。これは面白くなってきそうだ
▼エキストラ、炊き出し、交通整理、ロケ中のボランティアだけ考えても、市民が関われることはたくさんある。成功の鍵を握るのは、出演者や脚本の魅力だけとは限らない。肝心なのは市民が「自分たちで作った映画」と胸を張れるかだろう
▼「わっすごい、ここ映画で見たよ」。恋物語に憧れる若者たちの聖地・名護。ガジュマルの通りは多くの人が行き交い、活気づいている-。少し遅めの初夢で見たのは、市民が主役となった未来のまちの姿だった。