<金口木舌> 星空のロマン


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 かつて沖縄の人々は夜空に広がる星の“メッセージ”を生活の糧にした。八重山の古謡「むりかぶしゆんた」は琉球王府からの重い年貢で苦しむ農家を星が救う歌。天の真ん中を通る昴(すばる)が島の人々に季節と農作業の時期を知らせ、豊作をもたらした話だ

▼「てぃんさぐぬ花」に出てくるにぬふぁぶし(北極星)も遠い国への貿易航海や漁で方角を知らせる大切な目印。星は島の人々の暮らしを支えていた
▼大気が流れ澄んでおり、ジェット気流の影響を受けにくい沖縄は星の文化を育むには好条件下にある。特に石垣島は21の1等星全てや88星座中84星座が見られる全国にはない環境だ。観光客は本土の星空との違いに驚く
▼乾燥して空気がきれいな冬は特に星がよく見える。昴の観測には絶好の季節という。石垣で観測しやすい南極老人星は、見た人は長寿になるとの伝説もある
▼沖縄の星文化を再発見し、PRすれば観光の目玉にできるかもしれない。石垣島天文台の宮地竹史所長は「天体と共に生きた沖縄の文化をもっと取り戻したい」と意気込む
▼東日本大震災以降、石垣島で毎年開かれる「南の島の星まつり」に倣い、電灯を消す取り組みが全国で広まっているという。天体観測はエコツーリズムにもつながる。星空を見上げ、先人が見いだした物語に耳を澄ますことを、季節の楽しみの一つに加えたい。