<金口木舌>首長選の争点とは


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 江戸時代の僧、良寛の「欲なければ一切足り、求むれば万事休す」を引いて、閉居の思想を語っていた元首相が一転、東京都知事選に出馬する。政界を引退し、陶芸や書画を楽しんできた細川護熙氏である

 ▼8年前に沖縄で講演した際も桃山時代の陶芸家、光悦を「他人から高い評価を得たいという物欲しげなところが全くない」と評した。講演後の立ち話でも自身の個展の話に終始し、政界への未練は微塵(みじん)も感じさせなかった
 ▼出馬の狙いは原発再稼働や輸出を進める安倍晋三首相の動きを食い止めるためという。小泉純一郎元首相という強力な援軍を得て「脱原発」での一点突破を図る
 ▼早速、安倍首相は「諸課題についてバランスよく議論された選挙戦を」とけん制したが、原発問題が争点になったことへの焦りは隠せない
 ▼原発やエネルギーは国策であり、一首長選の争点にはならないという議論もある。しかし、この問題を重視する有権者は多い。元首相二人の“参戦”により、原発の再稼働や新設の是非が焦点となるのは間違いない
 ▼基地問題も、政府の言い分によれば一首長選の争点ではないのだろう。しかし、米軍普天間飛行場の移設問題に18年も翻弄(ほんろう)された名護市民だ。親子や友人が基地か経済かで引き裂かれた。この選挙の最大の争点は移設問題であり、市民が意思を表明できる機会だ。やはり選挙に行こう。