<金口木舌>「ノーサイド」のホイッスル


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 稲嶺進さんの再選に終わった名護市長選に接し、二つの言葉を思い出す。一つは「自分たちのことは、自分たちで決める」であり、もう一つは「ノーサイド」

▼海上基地建設の是非を問う1997年の住民投票を提起した市民の合言葉が「自分たちのことは、自分たちで決める」だった。市民の運命と街の将来を勝手に決めようとする政府への抵抗の意思を含んだ
▼「ノーサイド」は試合終了を告げるラグビー用語。2006年に亡くなった元市長の岸本建男さんが好んで使った。この言葉に込められた「試合が終われば敵味方なし」という理念は、名護で生かされてこなかった
▼住民投票で示された海上基地拒否の意思は覆され、選挙のたびに市民同士が対立した。沖縄に負担を強いる日米安保という欠陥だらけのルールに固執する政府は、一方のチームに肩入れしながらゲーム観戦を決め込んだ
▼今選挙で市民は自己決定権に根差し、自らの運命を「決めた」。辺野古移設を「淡々と進める」との政府反応は予想の範囲内だったが、「もう承認したから」という仲井真知事の発言には仰天した。市民を放り出し、競技場を離れるつもりなのか
▼名護の試合は終わった。今度は政府が市民意思を掲げ、米政府に真剣勝負を挑むときである。ルールは安保ではなく民主主義。市民は「ノーサイド」のホイッスルを待っている。