<金口木舌>オキナワ・オピニオン


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 サーカスを芸術に高めたと称されるシルク・ドゥ・ソレイユか、歌手のセリーヌ・ディオンか。それとも夏季五輪の地モントリオールか。カナダのケベック州と聞いて思い出す事柄は何だろうか

▼同州のリゼ貿易大臣は日本記者クラブでの講演で「われわれはカナダや米国のどの州よりも外国で存在感を示そうとする強い意志がある」と胸を張る
▼住民の8割がフランス系というケベックは極めて独立志向の強い州だ。過去2回、カナダからの分離独立を問う住民投票をしている。特に1995年は、独立賛成49に対し、反対51の僅差に迫った
▼現在は、州が国際関係や貿易など大臣を任命し、東京など28都市に代表事務所を置いて独自外交を展開する。元ジャーナリストで独立派だというリゼ氏が繰り返したのは「ケベック・オピニオン(ケベックの意見)」だ
▼イラク戦争の際、米国に追随して派兵しようとした政府に反対して、ケベック州で気温マイナス20度の中、20万人が集会を開いた。クレティエン首相は米国の派兵要請を拒絶せざるを得なかった
▼かつては居酒屋談義とされた独立論が沖縄で高まり、独立研究学会までできた。背景に「オキナワ・オピニオン」を無視して新基地を造ろうとする政府への怒りがあることも軽んじてはならない。ケベックが、地域のことは地域が決める自己決定権の重要性を教えてくれる。