<金口木舌> パイオニア精神


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 7年総額とはいえ約160億円とは驚いた。自治体の予算規模を想起させる金額だ。プロ野球楽天の田中将大投手(25)は、この額で米大リーグのヤンキースと契約を結んだ。大リーグ史上、投手の総額では5番目という

 ▼桁外れの額が田中投手への期待の高さをうかがわせる。投手としての実力だけでなく、大舞台での内面の強さも見込まれた。ヤンキース首脳との面談で「(ローテーションで)楽はしたくない。男になりたい」と言ったそうだ
 ▼高い評価への背景には、これまでの日本人投手の活躍がある。最近ではダルビッシュ有投手(レンジャーズ)や岩隈久志投手(マリナーズ)がチームを支える柱となって活躍している
 ▼20年ほど前には、野茂英雄氏が日本人メジャーリーガーのパイオニアとして道を切り開いた。トルネード投法が旋風を巻き起こした。野茂氏のパイオニア精神を田中投手にも受け継いでほしい
 ▼けがで一時は所属球団がない逆境にあっても野茂氏は屈せず、引退直前にメジャー復活を果たした。野球への計り知れない愛情と、メジャーの歴史は自分がつくる-という気概が、投手生活を支えたのだろう
 ▼2月に始まる楽天の久米島キャンプで田中投手の姿が見られなくなるのは残念だ。気持ちを前面に出すあの姿を、県内ファンは決して忘れまい。メジャーの打者をピシャリと抑え“ほえる”勇姿を早く見たい。