<金口木舌>食物アレルギー、地域で支える沖縄観光


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 好きな教科を問われ「給食」と答えた経験がある。小学生時代の無邪気な思い出である。根っからの食いしん坊なのか、今でも“グルメ旅行”が好きだ

 ▼食材の堪能は旅の醍醐(だいご)味の一つ。ただ、食物アレルギーの子や家族にとってはそう単純ではない。慎重に食事を注文し、症状を誘発する食材が見つかれば取り除かねばならない。外食は苦労が多い
 ▼「食材を気にしない安心な観光を」。南城市観光協会などが本土客や県内家族を対象にモニターツアーを行う。カフェや食品関連企業、旅行社、ホテルなどが連携し、専門医も側面支援する
 ▼関係者の中に食物アレルギー対応の食品専門店を糸満市で営む女性がいる。アレルギー体質の息子のためになれば-と店を立ち上げた。同じ悩みを持つ母親の買い物を楽にしたい-。優しさが店を包む
 ▼「食事は子の心の栄養にもなる」。モニターツアーに参加する子の表情に、言葉の意味を実感する。食物アレルギーへの対応が、久米島観光協会のツアーや東村の民泊受け入れ農家の講習会などでも進む。沖縄観光の進化はうれしい限りだ
 ▼国内約45万人の児童生徒に食物アレルギーがあるという。おいしくて体に優しい食の開発を飲食店やホテルに期待したい。こうした心遣いは、人に優しい地域づくりの種にもなり得るだろう。子育て世代の一人としてそう思う。