<金口木舌>主席の「誤解」、知事の「確信」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 日本各地で大学紛争が激化し、月面に人類が降り立った1969年。激動の時代を流行語「Oh!モーレツ」が代弁し、ヒット曲「夜明けのスキャット」が甘く包んだ

 ▼この年の沖縄を振り返るとき、「感触」と「誤解」の二語にたどり着く。前年11月のB52墜落とその撤去を求めて労組などが構えたゼネストに絡み、屋良朝苗主席を捉えた言葉だった
 ▼ストによる混乱を危惧した屋良主席は69年1月30日、木村俊夫官房副長官を訪ね、「B52は7月までには撤去される」との情報を聞く。実は主席を安心させるための楽観的見通しだった
 ▼撤去の「感触」を得た屋良主席の要請でストは2月4日の決行直前に回避される。週刊誌は屋良主席の「感触」を「うるわしき誤解」と書き、木村副長官も「(主席は)政治的誤解をしてくれた」と回想した
 ▼スト回避の評価はさまざま。米政府が公開した公文書は、「感触」と「誤解」の背後にスト回避を意図して日米が仕組んだ「策略」の存在を示唆する。沖縄が安保の根幹を揺るがすとき、政府は奇策と甘言を繰り出すという教訓である
 ▼「感触」を頼りにスト回避を求めた屋良主席には、県民と共に歩んだがゆえの苦悩があった。45年後、県民に背を向け、菅官房長官らと密会した仲井真知事に苦悩はあるか。国との共同歩調に執心する知事の「確信」の意味を県民は凝視している。