<金口木舌>戦争を終わらせたウイルス


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 今年は第1次世界大戦勃発から100年。1914年7月、オーストリアがセルビアに宣戦布告し、欧州列強が次々と参戦して、人類初の世界戦争となった

▼第1次大戦は戦争の形を大きく変えた。飛行機や戦車、潜水艦、毒ガスという最新兵器が初めて使われ、大量虐殺が繰り広げられた。軍人同士による戦いから、全国民を巻き込む「総力戦」になり、市民の犠牲者も一挙に増えた。軍民合わせて千数百万人が命を落とした
▼戦争終結を早めた一因として指摘されるのが、世界的に大流行したインフルエンザ「スペイン風邪」だ。終盤で参戦した米軍が、米本国で広がっていたウイルスを18年の欧州上陸とともに持ち込み、死者は両軍に拡散した。ドイツ軍は発病する兵が続出し、最後の大攻勢を遂行できなかったという
▼当時、情報統制をしていなかった中立国のスペインだけが実情を正しく報道したため、「スペイン風邪」と呼ばれるようになったそうだ。3波に及ぶ流行で、死者は世界で5千万人を超えた。大戦を上回る数だ
▼県内でインフルエンザ患者が増えている。全国一の発生率で警報も出た。今季は2009~10年に大流行したH1N1型が多く、重症化が懸念される。県外では薬が効きにくいウイルスも見つかっている
▼毎年の流行と侮らずに、手洗い、うがい、マスクなど、基本的な予防策を徹底したい。