<金口木舌>高校生のものづくり


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 文字通り、溶けるような舌触り。口に入れた途端、ほろりとほどけ、くどさのない甘みを感じる。これが王家に愛された味かと納得した

▼北部農林高校の生徒が開発した「きんそこう」のこと。いわゆる「ちんすこう」だが、現在使われる一般豚のラードでなく、アグーの脂を使い、明治時代の味を再現した。単に昔風の名前を付けたのではない
▼「アグーの里」を宣言する名護市だけに、アグーにこだわり、食用として使い道の少ない脂を活用した高校生の着眼点にうならされた。庶民のおやつと思っていたちんすこうが、上品な高級菓子であることも新たな発見だ
▼きんそこうの原点ともいえるアグー(ブランド名チャーグー)の復活をはじめ、高校生のものづくりに対する情熱には頭が下がる。同校の生徒はこれまでにもシークヮーサーの果皮を使ったケーキや化粧水の開発・販売なども手掛けてきた
▼北部農林だけでなく、中部農林はオクラ、南部農林はカボチャと、農林高校はそれぞれの地元で特産品を生かした商品開発をしている。規格外の野菜などに若者の視点と知恵で付加価値を高めようとする取り組みだ
▼ただ、魅力ある商品はできても販路が確保できないのでは困る。高校生が作り上げた宝物を、消費者にどうアピールするか。ここから先は大人の役割だ。若者の知恵と情熱をきちんと受け止めたい。