<金口木舌> 眠い目をこすりつつ


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 五輪選手並みの肉体と芸術センスと美しい容姿、そして運-というのがバレエダンサーの条件だそうだ。特に容姿は重要で、ロシアのバレエ学校では脚の長さの基準が決まっていたり、祖父母の代まで肥満者がいないか調べられたりする

 ▼才能があっても門前払いの世界では手足の短い日本人は不利と言われていた。だが、日本のホープは国際大会に入賞することで道を切り開いた
 ▼その象徴がローザンヌ国際バレエコンクールだ。若手ダンサーの登竜門と言われる同大会で今年は1、2、6位を日本人が占めた。1位の二山治雄さんは柔軟な体と跳躍力、体の軸がぶれない回転が持ち味だ
 ▼快挙の陰には日本人の体格向上とともに、努力で身に付けた正確な技術や独自の表現力がある。バレエ界も王子様やお姫様役ばかりでなく、個性が求められる時代。そんな“時の運”も後押しした
 ▼ローザンヌ入賞を経て、名門英国ロイヤルバレエ団の頂点に立った吉田都さんは記す。「お客さまは私の踊りを『日本人らしく繊細』と言ってくれる。身体条件では太刀打ちできないのだから、自分ならではの表現を探求している」と
 ▼ソチ五輪がいよいよ開幕する。世界の才能が鍛錬の成果を見せる舞台だ。日本選手も体格差を超えて活躍するだろう。努力の結晶と、神様のわずかな差配が決める名勝負を楽しもう。眠い目をこすりつつ。