<金口木舌> やんばる春の魅力


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 名護の市街地は道路が碁盤目になっているので、通りの向こうまで見渡せる。少し肌寒さもある朝、通勤途中の見慣れた景色がいつもと違って見えた

 ▼目を凝らすと、道路の突き当たりが、一面ピンクに染まっている。満開の桜が普段と違うまちの表情をつくっていた。日常の中にも楽しみや心浮き立つことは隠れている。そんなことに気付かされたのは、映画監督の一言だった
 ▼「今まさに名護は春。名護での春の訪れが、これほどまでに人を気持ちよくさせることに驚いた」。現在名護市で撮影が進む映画「風と海と恋と」の監督を務める大谷健太郎さんがインタビューで述べた一言だ
 ▼地元の人が見落としがちな風景も、映像のプロが見ると、よその場所にはない魅力的な場面に映るのだろう。インタビュー翌日は、通勤時に気を付けてみた。通り沿いは桜だけでなく、多くの花が咲いていた
 ▼まちなかに限らず、車で少し走れば名護岳に着く。ハクサンボク、リュウキュウイチゴ、シロタマカズラ…この1週間、名護岳で見た春の花の一部だ。市街地のそばで「春のやんばる」を体感できる貴重な場がある
 ▼足元の宝は、言われてみないと気付かない。注意すれば、誰もが見られる場所にある。それを生かすか見逃すかは感性次第だ。桜にとどまらず「やんばるの魅力」を広め、まちの活性化につなげたい。