<金口木舌>田イモ畑を俯瞰し、見つめる


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 沖縄の航空写真を見ていると、空から島の変遷を眺めているような錯覚に陥る。道路延長と住宅地拡大の一方で緑地や砂浜が消えた。航空写真は沖縄の表層をありのまま記録し、提示する

▼高みから見下ろすような航空写真の視線を離れ、街中を歩いてみる。失われたものの大きさをしみじみ感じる。自然、懐かしい家並みは帰ってこない。古い石垣や井戸を見つけると心が和む
▼鳥のように俯瞰(ふかん)しつつ、地に足を付けて細部を凝視するという反復作業で宜野湾市大山の田イモ畑と向き合う。耕地を減らしながら、今も水と土を支えに、農家が作物を育む歴史を重ねていることが分かる
▼市民グループが主催した田イモ畑の散策会に出掛けた。「畑を五感で感じて」と話す講師の案内であぜ道を進むと、せせらぎの音が聞こえてくる。古い湧き水や王朝時代の街道跡は大切な歴史遺産。この地を耕してきた先人たちを想像した
▼畑の一角にあるアダンの群落は海岸線の名残という。散策会の締めは蒸したての田イモと茎で作ったムジ汁。うまかった。貴重な財産を手放してはならない。味覚でも田イモ畑の魅力を感じた
▼宜野湾市の航空写真に戻る。畑の面積が減り、埋め立てによって海岸線が消えた。普天間飛行場の規模は相変わらず。次代に残すべきもの、私たちの世代で片付けるべきものは何か。鳥の目虫の目で見定めたい。