<金口木舌>金城哲夫だったら


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 結婚式の媒酌人を務める屋良朝苗元知事の写真は意外だった。指輪を交わす新郎は亡き金城哲夫さん。ウルトラマンの脚本家だ。故郷・南風原町の文化センターで開催中の生誕75周年祭で展示されている

▼二人の関わりは、金城さんが東京の高校に通っていた1956年、17人の高校生慰問隊を連れて来沖し、教職員会長だった屋良氏と面会したことにある(山田輝子著「ウルトラマンを創った男」)
▼沖縄にこだわった脚本家は、ウルトラシリーズの怪獣でも、頭の大きい「チブル星人」や、父のあだ名をもじった「キングジョー」を登場させた
▼最後の脚本となった「毒ガス怪獣出現」(71年)では、旧日本軍の毒ガス兵器を飲み込んだ怪獣が現れる。同じ年、米軍の毒ガス移送で揺れていた沖縄を重ね合わせたとされる
▼金城作品は単なる勧善懲悪では終わらない。怪獣誕生の背景に公害や自然破壊を盛り込み、子どもにも考えさせてくれる社会派として評価されている。時には人間が地球の侵略者だったという設定で、加害・被害や正義とは何かを多元的に問い掛けた
▼ウルトラマンの構想段階で、金城さんは「怪獣の殺し屋ではない。人々の願い、祈りに反応して助けてくれる存在」と語っている。日米政府という“大怪獣”が新基地を押し付けようとしている今、県民の願いをかなえる方法を彼ならどう描くだろうか。