<金口木舌> ブランドを磨く現場感覚


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 さりげなくブランド品を使いこなす人に気品を感じる。「あの人は全身ブランドずくめ」というせりふには皮肉が交じる。誰を相手にするにせよ、ブランド戦略はものづくり業の盛衰を左右する

 ▼「お菓子のポルシェ」社長の澤岻カズ子さんから興味深い話を聞いた。客に配る特製バッグの絵柄を決める会議でのこと。ゴーヤーやシーサーを推す声に対し、社長は主力商品の「紅いもタルト」を描くべきだと説いた。議論は伯仲した
 ▼沖縄風の素材を生かすか、自社製品で勝負するか。悩ましい判断の末、数種類のバッグを作ったところ、客の一番人気は「紅いもタルト」の絵柄だった。自社ブランドにこだわった社長の直感が当たった
 ▼創業者の経験に加え、店舗で客とじかに接している従業員の声を重んじたという。ブランド力を磨くため、社長室にいながら、澤岻さんは現場感覚で客のニーズを探ってきた
 ▼「消費者の心を読め」という耳慣れた格言は「言うは易(やす)く行うは難(かた)し」の類い。企業は消費者心理の把握に苦労する。名高い一流ブランドの凋落(ちょうらく)を見るにつけ、読み違えたときの反動におののく
 ▼自然や風土、文化を含め、沖縄のブランド力は全国的にも上位にあろう。さらに磨きをかけるため、沖縄を求め、ゆかりの品を手にする人の心を読み解くことは欠かせない。現場感覚に根差し、目と耳を澄ませておこう。