<金口木舌> 銀世界の教訓


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 女流画家の第一人者といわれた上村松園に「牡丹(ぼたん)雪」という作品がある。萌葱(もえぎ)色の着物姿の娘が降りしきる雪に傘を斜めにして先を急ぐ。東京に大雪が降った夜、ウチナーンチュの当方は傘に積もる雪という見慣れぬ光景に「牡丹雪」とはしゃいだものである。しかし…

 ▼東京は大混乱で銀世界を喜ぶどころではなかった。都心では45年ぶりという大雪が2週続いた。朝、駅に向かうと雪交じりの冷たい水にすねまで漬かる羽目になった。排水溝が雪で詰まり、水たまりが多く発生したのだ
 ▼知人は欠航前の那覇発の飛行機に飛び乗ったら羽田で6時間、機内待機を強いられ、さらに電車の運休で雪道を1時間半歩いたそうだ。ただしこの程度は笑い話の類い
 ▼落雪に埋もれて亡くなる人もいた。高速道路で延々と立ち往生したり、建物の屋根が落ちたりするなど、多くの被害が生じた。道路の除雪が間に合わない例もあり、13都道府県で数千世帯が孤立した
 ▼食料や薬が届かない状況は、離島や過疎地域を抱える沖縄にとっても人ごとではない。雪害が増える背景には過疎化や高齢化で雪下ろしなどが難しいという事情もあるという
 ▼沖縄でも台風が迷走したり長く居座ったりすることが増えてきたように思う。厳しい自然に対処する方策を見直し、身を守る術を点検しなくてはならない。そう再認識した東京の牡丹雪だった。