<金口木舌>メダルを超えた輝き


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 感動の演技に感謝したい-。多くの国民が、ソチ冬季五輪フィギュアスケート女子で6位入賞した浅田真央選手に対し、こんな思いを抱いているのではないか。ショートプログラム(SP)での出遅れをフリーで挽回、銀盤にメダル以上の輝きを残した

 ▼大きな期待を担って臨んだSPだったが、トリプルアクセルでの転倒などミスを重ねた。演技後、ぼうぜんと「どう乗り切るのか自分でも分からない」と語る姿は痛々しかった
 ▼メダルは遠のいたが、逆に「頑張れ、真央!」との思いからフリーに注目が集まった。期待以上の演技だった。次々とジャンプを決め、SPとは別人かと思うほどだった。母親を亡くした後のスランプを克服し、一回り大きく強くなった浅田真央がそこにいた
 ▼そんな中、元首相で東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗氏の暴言が、浅田選手やその支援者を傷つけた。「あの子、大事なときには必ず転ぶんですね」。スポーツマンシップがみじんも感じられない
 ▼森氏には重圧と闘い演技をする選手への敬意がない。今後、世界のスポーツ界と交渉する人物としてふさわしくない、と感じた国民も多いはずだ
 ▼県内でも真夜中の演技を見守った人は少なくなかっただろう。今季限りでの引退を表明した浅田選手だが、来月、国内で開かれる世界選手権に出場する。浅田選手の輝きを目に焼き付けたい。