<金口木舌>あやかりたい「生涯現役」


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 時計の針が午前6時を指すころ、作業服姿の男たちが次々と車で乗り付ける。自宅近くの総菜屋の一日が始まる。店の中心に常連客と楽しそうにユンタクする女性の姿も見える。73歳の“看板娘”だ

▼早朝の書き入れ時も、開業20年余のベテランは全く慌てない。仕事現場に向かう子や孫の世代との触れ合いも大切にする。人懐っこい笑顔は、地域を元気づける“ビタミン剤”だ
▼所変わり創業133年の与那原町の手芸店。創業時は雑貨や飲食などの販売が中心だったが、戦後は手芸品の取り扱いを増やした。5代目、84歳の津波古秀子さんは今も現役で存在感が大きい
▼店内の帽子やベスト、縫いぐるみなど、全てお手製だ。手のぬくもりが店を包む。そういえば、手編みのプレゼントに照れる友人を見て、うらやむ自分がいた。20年以上前の思い出だ
▼最近は客足がまばらで、店主はインターネットを活用すれば「注文が増えるかな」とも考える。時代の波を感じている。半面「手作りへの憧れは今の子らにもある」とも。老舗の葛藤か
▼商いとは次元が異なるが、存在感で言えば自治体の「長寿大学」で学ぶ高齢者の姿もはつらつとしている。好奇心の旺盛な方が多く、頭が下がる。共働きの子育て世代には、わが子を保育園や学童に送迎する祖父母は頼みの綱。生涯現役-いつか自分もあやかりたい。