<金口木舌>売り方の工夫、地域をつくる


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 台湾との民間交流を進めている市民グループの酒席で「台湾観光客に人気のお菓子を知っているか」と問われた。菓子類には疎く見当がつかない。答えを聞くと、愛知県産のチョコレート菓子だという

▼1個30円ほどという手頃さもあり、土産品として重宝がられている。発売から20年、県内でも人気商品のようだ。店内の目立つ場所で売るスーパーやコンビニもある。沖縄観光の土産が県産品でないのは少々寂しい
▼その台湾観光客が好んで食べるのが島豆腐だと聞き、ほっとした。台湾にも豆腐はあるが、島豆腐の適度な硬さと素朴な味が人気を呼んでいる。温かなゆし豆腐も好評という。どちらも県民食と言っていい
▼なじみの商品も売り方次第で新たな客をつかむ。くだんのチョコレート菓子の製造者はバレンタインデーに当て込んで「一目で義理と分かるチョコ」という売り文句を掲げ、話題となった。菓子だけに販売戦略もひと味違う
▼購買欲をそそるのは必ずしも新商品とは限らない。「いい物を作れば売れるはず」の意気は良し。されど「今ある物をどう売るか」の手だても忘れてはならぬ。製造業だけでなくサービス業にも共通する宿題である
▼売り方の工夫は地域おこしでも欠かせない。埋もれている宝を掘り出し、市民の知恵で温めて、調味料を加えよう。わが街自慢の一品は一層うまみを増してくる。