<金口木舌>次代へつなぐ伝統人形劇


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 人形たちが舞台いっぱいに駆け回り、宙に舞う。名護市であった人形劇団「かじまやぁ」(桑江純子代表)の40周年公演。会場には300人以上が詰め掛け、立ち見も出た

▼記念公演で演じた「チョンダラー」は劇団の集大成といえる作品だ。歌あり、笑いあり、涙あり。人形たちのアクロバティックな動きに見入ってしまう
▼島言葉のせりふもあり、子どもたちはきょとんとするが、人形の動きと周囲の大人の反応でおおよそ意味が分かる。楽しみながら伝統文化に興味を持つ大きなきっかけにもなっている
▼桑江さんが劇団を旗揚げしたのは「沖縄の言葉や文化が失われる」との危機感があったからだという。活動が行き詰まった10年目にやめようと思ったこともあったが、台湾の師匠との出会いや目を輝かせて見入る子どもたちの存在に支えられた
▼やんばるには人形の獅子が舞う伝統芸能がある。名護市川上、今帰仁村謝名、本部町伊豆味の「操り獅子」だ。由来こそ違うが、桑江さんと各地の芸能に共通するのは「シマの伝統を守る」という心が根底にあることだ
▼残念なのは桑江さんの劇以外、5年または2年ごとの豊年祭でしか見られない。シマの誇りを次代に伝えるには常設の劇場や定期的な公演会など演じる場が今以上に必要だろう。子どもも大人も夢中になる人形の躍動感を多くの人に見てもらいたい。